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営業リストとは、自社の商材を売る相手になりうる会社(と担当者)を、条件を揃えて一覧にしたものです。 会社名・住所・法人番号の3つは国の公開データから全法人ぶん無料で取れ、従業員規模や業種も公開している会社のぶんは無料で付けられます。この記事は、公開データを法人番号でつなぎ、有料サービスに頼らずに営業リストを作る手順を説明します。
検索上位の「営業リストの作り方」の多くはリスト販売会社や営業ツール会社の記事で、結論が自社サービスの紹介になっています。ここでは公開データでどこまで無料で作れ、どこからが有料の領域かを線引きします。
営業リストに載せる項目は何か
列は3つの層に分けて考えます。企業の層は公開データで埋まり、人物の層は自社の活動で埋め、管理の層は運用のために自分で足します。
| 層 | 項目 | 公開データで取れるか |
|---|---|---|
| 企業(必須) | 会社名・住所(郵便番号・都道府県・市区町村・番地に分割)・法人番号 | 全法人ぶん取れる(法人番号公表サイト) |
| 企業(あると強い) | 従業員規模・業種・設立年・Webサイト・資本金 | 公開している会社ぶんだけ(Gビズインフォ。資本金は上場企業が中心) |
| 企業(自社で調べる) | 電話番号・代表メール | 公開データにない。会社サイトで調べるか有料サービス |
| 人物 | 担当者名・役職・決裁権の有無・接点の経緯 | 接触して初めて埋まる |
| 管理 | ステータス・最終接触日・次回予定日・担当営業・除外理由 | 自分で足す。SFA(営業支援システム)に取り込む前提で列名を固定する |
無いと困る列は法人番号です。 社名は表記ゆれ(株式会社の位置、全角英数)で同じ会社が二重に入りますが、法人番号は13桁で一意です。翌月に更新したリストを足すときも、法人番号で重複を弾けます。
海外の営業支援ツール各社のガイドも、企業属性(業種・従業員数・売上・所在地・設立年)と人物属性(役職・決裁権・接触履歴)を分けて持つ構成で一致しています。日本の実務ではこれに資本金と法人番号が加わります。
営業リストの作り方は5ステップ
- 理想顧客を条件で書く。 受注した顧客の共通点を「地域・従業員規模・業種・状況」で書き出します。ABMの記事にある理想顧客像(ICP)の作り方と同じで、ペルソナは人物側、ここは企業側の条件です。判断の目安は「その条件の会社が数百〜数千社あるか」です。数十社ならリストではなく個別攻略、数万社なら条件が甘すぎます。
- 母集団を数える。 条件に当てはまる会社が何社あるかを先に見ます。営業リスト作成ツールは国の公開データを地域×規模で絞って件数を即時に出すので、ここで使います。たとえば東京都渋谷区で社会保険の加入者が10〜49人の株式会社・合同会社は4,355社です。
- 使い切れる量に絞る。 目安は1人が1〜2か月で当たれる量です。架電なら1日30件として600〜1,200件、訪問なら1日5件として100〜200件。4,355社なら市区町村を分けるか、規模を1帯に絞ります。
- 精査して除外する。 社名で明らかに対象外の業態(自社の商材と無関係な会社、同業、既存顧客)を外します。法人番号で既存顧客リストと突き合わせると、既存顧客への誤架電を防げます。
- SFAに取り込み、月1回更新する。 列名をSFA側の項目に合わせ、法人番号を一意キーにして取り込みます。翌月の更新分は法人番号で照合し、新しい会社だけ足します。CRM・SFAの選び方はCRM/SFAの違いと選び方を参照してください。
無料で使える公開データ源の比較
営業リストの母集団に使える公開データは複数あります。それぞれ「取れる項目」と「取れない項目」、利用条件が違うので、法人番号をキーに組み合わせます。
| データ源 | 取れる項目 | 取れない項目 | 利用条件 |
|---|---|---|---|
| 国税庁 法人番号公表サイト | 商号・本店所在地・法人番号(全法人)。法人種別・変更履歴・閉鎖情報。全件CSVと日次差分をダウンロード可 | 電話・URL・業種・従業員数・資本金・代表者名。個人事業主は対象外 | 商用可。出典表示「国税庁法人番号公表サイト」が必須、加工したら加工した旨を明記 |
| Gビズインフォ(経済産業省) | 法人番号に紐づく従業員数・業種・設立年・URL・資本金・代表者名(公開している会社のみ)、補助金・調達・特許・財務、社会保険の加入者数 | 電話・メール。非上場の中小企業は資本金・財務が空欄になりがち | 商用可・加工可。出典表示「Gビズインフォ(経済産業省)を加工して作成」。一括ダウンロードとAPIは無料の申請制 |
| EDINET(金融庁) | 有価証券報告書を出す会社の従業員数・平均年収・売上・事業内容 | 提出義務のない中小企業。担当者連絡先 | 商用可。APIは可、画面のスクレイピングは禁止 |
| 建設業者・宅建業者等企業情報検索(国土交通省) | 建設業・宅建業・マンション管理業など複数業種の許可番号・商号・代表者名・所在地・資本金・許可業種 | 従業員数・URL。一括ダウンロードの案内はない | 画面検索で利用。出典表示のうえ商用可(国交省サイトの共通規約) |
| 介護サービス情報公表システムのオープンデータ(厚生労働省) | 介護事業所の名称・所在地・電話・法人名・サービス種別・定員(年2回のCSV) | メール・担当者 | 商用可。出典表示が条件 |
| 医療情報ネットのオープンデータ(厚生労働省) | 病院・診療所・薬局の名称・所在地・診療科 | 担当者 | 出所明記のうえ転載可 |
| 適格請求書発行事業者公表サイト(国税庁) | 登録番号・名称・登録年月日・本店所在地(法人)。全件ダウンロード可 | 名称での検索はできない。電話・URL・業種 | 商用可・出典表示。プログラムによる画面取得は禁止 |
| ハローワークインターネットサービス | 求人票の事業所名・所在地・電話・従業員数 | 使えない。事業所を営業の対象にする行為が禁止されている | 求人と求職を結びつける目的に限る |
組み合わせの基本形は、法人番号公表サイトで母集団を持ち、Gビズインフォで規模と業種を付け、業種が欲しい場合は許認可リスト(建設・介護・医療など)で補う、という3段です。営業リスト作成ツールは前2段をあらかじめ結合してあり、社会保険に加入している約272万社を地域×規模で絞れます。
公開データからリストを作る具体例
「東京都渋谷区、社会保険の加入者10〜49人、株式会社と合同会社」という条件で進めると、次の数字になります。
| 段階 | 会社数 |
|---|---|
| 東京都の社会保険加入法人 | 549,840社 |
| うち渋谷区 | 46,391社 |
| うち加入者10〜49人 | 4,808社 |
| うち株式会社・合同会社 | 4,355社 |
4,355社は1人で回るには多いので、たとえば「10〜29人」だけに絞れば3,479社、さらに社名に「システム」を含む会社だけにすれば数百社まで落ちます。ここまで来たら会社名・住所・法人番号の入ったCSVを取り出し、SFAに取り込みます。
電話番号はこの段階では入っていません。取り出したCSVに「Webサイト公開あり」の列があるので、サイトが分かる会社は会社概要ページから代表番号を拾い、分からない会社は郵送やフォームでの接触に回します。すべての会社に電話番号を付けたい場合は、ここから先が有料サービスの領域です。
有料の営業リストサービスと何が違うか
| 観点 | 公開データ(無料) | 有料サービス |
|---|---|---|
| 母集団 | 全法人(法人番号)、属性つきは公開している会社のみ | 100〜170万社。属性は各社が独自に収集 |
| 電話・担当者名 | ない | ある(自社調査・電話帳・企業サイトの巡回で収集) |
| 業種 | 公開している約14万社、または許認可リストの業種 | 独自分類で全社に付与 |
| 更新 | 法人番号は日次、規模は半年ごと | 週次〜月次 |
| 費用 | 無料(出典表示のみ) | 月数千円〜、または1件数十円 |
有料サービスの価値は「電話番号と担当者名」と「全社に付いた業種」です。逆に言えば、母集団の抽出と規模での絞り込みまでは公開データで足ります。無料でここまで作ってから、電話番号が必要な分だけ有料で補う順番が、費用対効果の面で合理的です。
よくある失敗
- リストの件数を目的にする。 5万件のリストは1人では1年かけても回れず、回る前に鮮度が落ちます。使い切れる量まで絞り、翌月に新しい分を足すほうが成果が出ます。
- 社名で重複を判定する。 「株式会社〇〇」と「〇〇株式会社」、全角と半角の英字で同じ会社が二重に入ります。法人番号で判定します。
- 求人サイトの情報を営業に流用する。 ハローワークは営業目的の利用を禁止しています。求人サイトの規約も同様のことが多く、リストの出所として説明できません。
- 属性が空欄の会社を「該当しない」と読む。 Gビズインフォの業種・設立年は公開している会社ぶんしか入っていません。空欄は「不明」であって「対象外」ではないので、業種で絞りすぎると母集団を捨てることになります。
- 管理列を後から足す。 ステータス・最終接触日・次回予定日の列がないリストは、2週間で「誰がどこまで当たったか」が分からなくなります。取り込む前に列を固定します。
法令の注意
- 法人の名称・所在地・法人番号は個人情報ではありません。 個人情報保護法のガイドラインは、法人そのものに関する情報は個人情報に当たらないとしています。一方で役員や従業員に関する情報は個人情報です。代表者名を含むリストを作る場合、代表者名で検索できる構成にすると個人情報データベースの扱いになるため、法人名でのみ検索できる形にします。
- メール送信は特定電子メール法に従います。 同意のない送信は原則禁止で、Webでアドレスを公表している法人宛ては例外的に送れますが、「送信拒否」の表示があれば送れません。送信者名・受信拒否の方法・住所・問い合わせ先の表示が義務で、違反は法人で3,000万円以下の罰金です。
- 電話勧誘は特定商取引法の対象になりえます。 事業のための取引は原則として適用除外ですが、消費者庁は「稼ぐ意思があるだけでは直ちに該当しない」として相手の取引経験などを総合的に判断するとしているため、個人事業主や小規模事業者が相手の場合は除外を前提にしないほうが安全です。名乗り・目的の明示と、断られた相手への再勧誘をしないことは、法人相手でも守るべき最低線です。
- 出典を表示します。 公開データを加工したリストを社外の資料に載せるときは、データ源の規約どおりに出典を書きます。社内の営業リストとして使うだけなら表示は不要です。
営業リストができたら、初回接触の質問を営業ヒアリングシートで用意し、接触結果を商談メモでSFAに残す流れが、インサイドセールスでもリードジェネレーションでも共通の型です。件数から必要な行動量を逆算するには営業目標逆算ツールが使えます。
よくある質問
営業リストは無料で作れますか?
作れます。国税庁の法人番号公表サイトとGビズインフォ(経済産業省)は商用利用と加工が許可された公開データで、会社名・住所・法人番号は全法人、従業員規模や業種は公開している会社ぶんが取れます。電話番号と担当者名は公開データにないので、そこだけは自社で調べるか有料サービスを使います。
営業リストに最低限必要な項目は何ですか?
会社名・住所・法人番号・電話番号・業種・従業員規模の6つです。法人番号は重複判定と更新のキーになるので必ず持たせます。これに担当者名・役職・ステータス・最終接触日・次回予定日の管理列を足すと、SFA(営業支援システム)に取り込んだあとも運用できます。
営業リストは何件あれば十分ですか?
1人が1〜2か月で使い切れる量が目安です。架電中心なら1日30件として600〜1,200件、DMなら1回の郵送予算で決めます。多すぎるリストは鮮度が落ちる前に使い切れず、結局は上位だけ当たって残りが無駄になります。
ハローワークの求人情報を営業リストに使ってもいいですか?
使わないほうが安全です。ハローワークインターネットサービスの求人情報は「求人と求職を結びつける」目的での利用が条件で、事業所を営業の対象にする行為は禁止と明記されています。営業リストの母集団には法人番号公表サイトやGビズインフォを使ってください。
営業リストの会社にメールを送るのは違法ですか?
同意なしの送信は原則違法です。特定電子メール法では、Webでアドレスを公表している法人宛ては例外的に送れますが、「送信拒否」の表示があれば送れず、送信者名・受信拒否の方法・住所・問い合わせ先の表示が義務です。電話と郵送はこの法律の対象外で、法人向けの営業として一般に可能です。