クラウドとオンプレミスの費用比較|5年TCOの試算方法と判断基準

クラウドとオンプレミスの費用は、5年程度の総保有コスト(TCO)で比較しないと判断を誤ります。 初期費用の小さいクラウドは短期で有利に見えますが、月額が積み上がるため、どこかでコストが逆転する年が来ます。この記事では、TCOに含める費用項目、逆転年の読み方、費用以外の判断軸を解説します。

費用構造の違い

観点 クラウド(月額型) オンプレミス(買い切り型)
初期費用 小さい(構築・移行費のみ) 大きい(機器+ライセンス)
継続費用 月額・従量課金が続く 保守費+電気代+運用人件費
会計処理 費用として毎期計上 資産計上して減価償却
拡張 契約変更で即時 機器の追加調達が必要
更新 提供元が実施 数年ごとにリプレース費用
クラウドは「初期が軽く、ずっと払う」。オンプレミスは「初期が重く、途中から軽い」。比較すべきは月額ではなく、累積コストの折れ線がどこで交差するか。

オンプレミスは自社の設備にシステムを置く形態で、クラウドはインターネット経由で外部の基盤を利用する形態です。クラウドの中でも、基盤だけ借りるIaaS・PaaSと、完成したサービスを使うSaaSでは、自社で負う運用範囲が変わります。運用範囲が広いほど、TCOに含めるべき人件費も増えます。

TCOに含める費用のチェックリスト

TCOは支払う金額だけではありません。試算のときに漏れやすいのが次の項目です。

オンプレミス側

  • ハードウェア購入費と、5年後のリプレース費用
  • ソフトウェアライセンスと年間保守費(開発費・導入費の年15〜20%が目安としてよく使われます)
  • 設置場所・電気代・空調
  • 運用担当者の人件費(監視・バックアップ・障害対応・パッチ適用)
  • 障害時の停止による業務影響

クラウド側

  • 月額基本料金と、利用量に応じた従量課金
  • 初期構築費・データ移行費
  • 回線費用の増加分
  • 契約終了時にデータを取り出して他へ移す費用
🧰 関連ツール: 初期費用・月額・保守費・年数を入れると、累積コストのグラフとどちらが安くなるかの逆転タイミングを表示するクラウド vs 買い切りTCO比較ツールがあります。契約中のSaaSをまとめて年額・3年総額に換算するならサブスク費用計算ツールへ。

逆転年の読み方

数字を置いて考えます。買い切り型が初期600万円+年間保守90万円、クラウド型が初期100万円+月額20万円(年240万円)という前提なら、累積コストは次のようになります。

経過年 買い切り型 クラウド型
1年目 690万円 340万円
2年目 780万円 580万円
3年目 870万円 820万円
4年目 960万円 1,060万円
5年目 1,050万円 1,300万円

この前提では4年目に逆転します。判断のポイントは、逆転年が想定利用期間より手前か後ろかです。 システムを3年で見直す方針なら逆転前なのでクラウドが安く、7年使うつもりなら買い切りが安くなります。

ただし上の表には運用人件費が入っていません。買い切り型に月0.2人分(年間約120万円)の運用工数がかかるなら、5年で600万円が上乗せされ、結論は逆転します。運用人件費を入れるかどうかで結果が変わるため、この項目を省いた比較表は信用できません。

費用以外の判断軸

①利用量の変動②運用体制③データの制約④出口の自由度
  1. 利用量の変動 — 繁閑差が大きい、ユーザー数が読めない用途はクラウドが有利です。買い切りはピークに合わせて調達するため、平常時は余剰を抱えます
  2. 運用体制 — 社内に担当者を置けるかどうか。置けない場合、オンプレミスの保守は外注費として顕在化します
  3. データの制約 — 業界規制や取引先の要件で外部保管が制限される場合、選択肢は絞られます
  4. 出口の自由度 — 移行のしやすさは事前に確認すべき項目です。データの取り出し形式が独自仕様だと、他へ移れず値上げを受け入れるしかなくなります(ベンダーロックイン)

古い自社システムを抱えている場合は、そもそも刷新するかどうかの判断が先に来ます。改修費が高騰し担当者もいない状態、いわゆるレガシーシステムであれば、費用比較の前に現行機能の棚卸しが必要です。

よくある失敗

  • 月額だけを比べる — 「月20万円なら安い」は年240万円、5年で1,200万円です。累積で見ないと桁を読み違えます
  • 運用人件費を計算に入れない — 買い切り型が安く見える最大の原因です。監視・バックアップ・障害対応にかかる時間を工数として金額に換算します
  • リプレース費用を忘れる — 買い切りは5年前後で更新時期が来ます。6年目以降も同じ保守費で使い続けられる前提の試算は現実的ではありません
  • 移行コストを片道でしか見ない — 入るときの移行費は見積もるのに、出るときの費用を確認しない例が多くあります。契約前にデータの取り出し方法を確認します

比較結果が出たら、社内の承認を通す段階です。費用対効果の書き方は稟議書の書き方、複数ベンダーから提案を集めるならRFP(提案依頼書)の書き方を参照してください。手元の数字で逆転年を出すなら、クラウド vs 買い切りTCO比較ツールに初期費用と月額を入れるのが早道です。

よくある質問

クラウドとオンプレミスはどちらが安いですか?

期間によって逆転します。初期費用が小さいクラウドは短期では有利ですが、月額が積み上がるため、利用量が一定で長く使う用途では買い切り型の方が安くなることがあります。単年度の支払額ではなく、5年程度の総保有コスト(TCO)で比較しないと判断を誤ります。

TCO(総保有コスト)には何を含めますか?

支払う金額だけでなく、運用にかかる社内工数まで含めます。オンプレミスならハードウェア・ソフトウェアライセンス・保守費・電気代・設置場所・運用担当者の人件費・数年後のリプレース費用、クラウドなら月額料金・従量課金分・初期構築費・移行費・回線費用が対象です。特に見落とされやすいのが運用の人件費と、契約終了時の移行コストです。

オンプレミスからクラウドへ移行すべきですか?

費用だけで決めるものではありません。利用量の変動が大きい、拠点が分散している、社内に運用担当者を置けない、といった条件が当てはまるほどクラウドが有利です。逆に、利用量が一定で既存資産の減価償却が残っており、外部にデータを置けない制約がある場合は、移行しない判断も合理的です。