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BtoBカスタマージャーニーとは?BtoCとの違いとマップの作り方・記入例

目次

BtoBカスタマージャーニーとは、法人顧客が課題に気づいてから、サービスを選び、社内の合意を得て使い始めるまでにたどる過程です。BtoCとの最大の違いは、検討する人・使う人・承認する人が分かれ、社内の合意づくりが道のりの一部になることです。

この過程を、行動・接点・考え・感情の欄で時系列に並べた図がカスタマージャーニーマップです。BtoBで作るときは、主役を1人の担当者に固定し、社内の関係者は「やり取りする相手」として書くと、誰の何を改善するかがぶれません。

BtoBカスタマージャーニーの構造:主役は1人、関係者は交わる相手 営業に会う前に進むことが多い 課題に気づく 情報を集める 試して比べる 社内で決める 使い始める 導入担当者 (主役) 現場の利用者 情報システム 決裁者 点線=主役が関係者とやり取りする場面。相手の体験は別のマップで扱う
図1:主役の線は1本に保ち、利用者・情報システム担当者・決裁者は主役と交わる場面として書く(本記事の架空例)。

BtoBとBtoCのカスタマージャーニーの違いは?

違いは、購入を決める単位が個人か組織かにあります。BtoCでは多くの場合、調べる人・買う人・使う人が同じです。BtoBでは役割が分かれ、承認の手続きを経て購入が決まるため、マップに書く段階と欄の中身が変わります。

観点 BtoC(個人の購入) BtoB(法人の導入) マップへの反映
検討に関わる人 多くは本人 担当者・利用者・情報システム担当者・決裁者など 主役を1人に固定し、ほかの人はやり取りする相手として書く
判断の根拠 好み・価格・口コミ 業務要件・費用対効果・社内の規程 「社内説明に必要な材料」を困りごと欄に入れる
購入の決め方 本人が決める 稟議などの承認を経て決まる 「社内で決める」段階を独立させる
検討の進み方 短く終わるものが多い 条件の確認で前の段階へ戻ることがある 一本道にせず、戻る場面を確認メモに残す
購入後 使うかどうかは本人次第 現場で定着しないと、更新や追加の判断に響く 初回運用まで範囲に含める

購買側から見た手続き全体(相見積もりや稟議の進め方)は、BtoBの購買プロセスで扱っています。この記事では、それを売り手が顧客体験の図として整理する方法に絞ります。

データで見るBtoBの購買:営業に会う前に候補が絞られる

BtoBの購買が複数人で、時間をかけて進むことは調査でも確認できます。HubSpot Japanが2026年6月11日〜16日に実施した日本のBtoB購買に関する意識・実態調査2026(調査はマクロミル、従業員50名以上の企業で直近12カ月にBtoB商材の比較・選定・稟議・承認・決裁などに関与した1,573名が対象)の結果は次のとおりです。

調査項目 割合 分母
関与した社内関係者が自分を含めて5人以上 46.9% 全回答者1,573名
2つ以上の会社・商品を比較・検討した 80.3% 全回答者1,573名
検討開始から決定まで1カ月以上かかった 50.9% 全回答者1,573名
売り手に接触した時点で、複数候補のリストアップ以降まで進んでいた 63.5% 売り手に接触した1,431名

海外でも同じ傾向が報告されています。Gartnerの2024年8〜9月の調査(B2B購買者632名)を紹介した発表では、購買グループは5〜16人、最大4つの部門にまたがるとされています。同じ発表によると、合意に至ったグループは、質の高い取引だったと答える可能性が2.5倍でした。個人の関心だけに合わせた情報は、グループの合意を妨げる方向に働いたとも報告されています。

さらに2025年8〜9月の調査(B2B購買者646名)では、67%が営業担当者を介さない購買を好むと答え、45%が直近の購買でAIを使ったと答えています。

マップに反映すると、次の3点になります。

  • 営業に会う前の段階を空欄にしない。検索・比較記事・生成AI・資料請求など、自社が直接見ていない接点で候補が絞られます。
  • 「社内で決める」段階を独立させる。担当者が社内で説明するための材料が足りているかを、困りごとの欄で確かめます。
  • 関係者全員で使える資料を支援案に入れる。担当者個人を説得する資料だけでは、社内の合意づくりを支えられません。

ペルソナとは?カスタマージャーニーとの関係

ペルソナとは、自社の典型的な顧客像を、役職・課題・情報収集の仕方まで具体化した架空の人物像のことです。カスタマージャーニーマップは、このペルソナが認知から導入・定着までをどう進むかを時系列で描いたもので、ペルソナが「誰が」、ジャーニーが「どう進むか」を受け持ちます。

BtoBでは、企業のペルソナ(業界・規模・課題)と個人のペルソナ(役職・追っている数字・決裁権)の2段で作ります。大切なのは属性を埋めることではなく、その人が何に困り、何と比べ、何を不安に思うかを具体的に書くことです。想像だけで作った理想の顧客像は実際の受注顧客とずれやすいため、既存顧客への聞き取りや商談の記録、失注理由から作り、定期的に実データと突き合わせて直します。

主役は誰にする?担当者と決裁者の分け方

BtoBでは、検討する人・使う人・承認する人が異なる場合があります。まず誰の体験を改善するのかを決め、途中で主語を入れ替えないことが重要です。

Nielsen Norman Groupの説明も、1枚のマップには1つの視点を置き、別の利用者の視点は別のマップで扱うよう整理しています。ペルソナは細かな人物設定を増やすためではなく、この主語と置かれた状況を揃えるために使います。

次の表は本記事の架空の役割分担です。会社によって、1人が複数の役割を兼ねることもあります。

役割 この例で確認すること 主役のマップへの書き方
導入担当者(主役) 現場で使えるかを調べ、社内の合意を得たい 行動・考え・感情を書く
現場の利用者 入力にかかる手間、日々の業務との適合 担当者が試用を依頼し、意見を集める相手として書く
情報システム担当者 権限・連携・運用条件 担当者が条件を確認する相手として書く
決裁者 導入の必要性、費用、優先順位 担当者が説明し、判断材料を確認する相手として書く

たとえば行動欄が「担当者が比較資料を作る」なのに、感情欄が「社長が費用を不安に思う」では、誰の体験かが混ざります。主役が担当者なら「費用の説明に必要な材料が足りない」と書き、決裁者の懸念そのものは別途確認します。BANTで扱う決裁権や予算の情報も、担当者の感情とは別の情報です。

記入例:顧客管理サービスを社内で使い始めるまで

ここからは実在の企業への調査結果ではなく、書き方を説明するための仮説例です。主役は「顧客情報の共有を任された導入担当者」、目的は「現場が使いやすく、社内の合意も得られるサービスを選ぶ」とします。段階名は、後で紹介する無料ツールの記入例と同じです(各欄の文言は一部異なります)。

段階 主役の行動 関わる社内の人 詰まりやすい点 自社で用意する支援案
課題に気づく 担当者ごとに違う顧客情報の管理方法を整理する 上司・決裁者(検討してよいか) 困りごとを業務の言葉で説明できない 現状の管理方法を整理する記入用紙
情報を集める 機能と導入事例を調べ、候補を3社に絞る 情報システム担当者(連携・権限の条件) 自社に近い規模・業務の事例が見つからない 利用人数や業務が近い導入事例
試して比べる 現場の利用者2人に、同じ作業を試してもらう 現場の利用者 何を試せば判断できるか決まっていない 自社の作業に沿った試用手順
社内で決める 費用と試用結果をまとめ、決裁者に説明する 決裁者 費用と必要性を説明する材料が足りない 費用の内訳と、関係者全員で読める説明資料
使い始める 初期設定を済ませ、チームで運用を試す 現場の利用者・情報システム担当者 最初の作業で止まり、相談先が分からない 初期設定の手順と相談先

3社・2人はこの記入例の条件であり、最適な比較社数や必要な調査人数を示すものではありません。順番も固定ではなく、条件が合わなければ「情報を集める」へ戻ります。対象範囲は初回運用までとし、更新・解約の体験は必要になったら別の目的で作ります。

無料ツール このBtoB記入例をツールで開いて書き換える

上の表と同じ段階名の架空例が入った状態で開きます(各欄の文言は一部異なります)。段階名を押すと、行動・接点・考え・気持ち・改善案を自社の場面に書き換えられます。

同じブラウザで作業中のデータがある場合は、そのデータを表示します。記入例は「例で試す」から選べます。

「試して比べる」の1列を詳しく書くと?

前の表から1段階を選び、ツールに入れられる内容へ具体化します。以下もすべて説明用の仮説です。

記入欄 入れる内容の例
お客様の行動 現場の利用者2人に、顧客情報の登録から引き継ぎまでを試してもらう
接点 デモ担当者との相談、試用環境
考えていること デモではできたが、忙しい日も入力してもらえるだろうか
気持ち 未確認なので、まだ分からない・未選択
困りごと 利用者に何を試してもらい、どう意見を集めるか決まっていない
改善案 代表的な作業を3つに絞った試用手順を用意する
根拠 仮説・まだ顧客に確認していない
確認メモ 導入担当者に、試用時に集めた意見と残った疑問を聞く。手順提供の効果は未確認

「考えていそうなこと」と「本人がそう話したこと」は分けます。気持ちが分からなければ空欄のままで構いません。なめらかな感情の線を描くことより、どこが未確認なのか分かることを優先します。

事実と仮説を分けて作る5つの手順

  1. 今回の判断を決める。「比較資料を増やすべきか」など、マップを見て決めたいことを1つ書きます。売上向上という大きな目標だけでは、調べる場面が広がりすぎます。
  2. 主役・目的・範囲を決める。「導入担当者が、現場の試用結果をもとに、社内説明の準備をする」のように書きます。決裁者の体験を知りたいならマップを分けます。
  3. 手元の記録を行動に置き換える。CRMの商談記録や問い合わせから、何をしたか・何を質問したかを抜き出します。初回の商談で「どこで候補を知ったか」「ほかに何社を比べているか」を聞いておくと、営業に会う前の段階を埋める材料になります。資料を開いた事実だけで「購入意欲が高い」とは断定しません。
  4. 分からない部分を質問にする。「不安があるはず」で終わらせず、「社内説明の準備で足りなかった情報は何か」など、確認できる質問を残します。発言を記録するときは、確認日と対象の範囲も付けます。
  5. 支援案と確かめ方を1組にする。「試用手順を渡す→どの作業で止まったかを次回聞く」のように、施策と確認方法を結びます。担当者・実施予定日・確認日も別の作業メモに残します。

使い始めた後の定着は、オンボーディングやカスタマーサクセスの取り組みにつながります。ただし、マップに記入しただけでは効果を実証したことにはなりません。

無料ツールで記入・保存する方法

カスタマージャーニーマップ作成ツールは、5段階に沿って入力し、図として確認するためのツールです。5段階は入力用の枠で、すべてのBtoB購買に共通する段階数ではありません。

  1. 「例で試す」から「会社でサービスを導入する」を選ぶ。本記事の記入例のリンクから開いた場合は、最初から選ばれています。現在の入力は架空例に置き換わるので、作業中の内容があれば先に編集データを保存する。
  2. 商品・サービス、お客様、かなえたいことを、自分が扱う場面に書き換える。
  3. マップの段階名を押し、行動・接点・考え・気持ちを編集する。「困りごと・改善案・根拠を追加する」を開き、段階名と確認メモも合わせる。
  4. 未確認の気持ちは「まだ分からない・未選択」に変更する。顧客に確認した場合も、確認メモに確認できた範囲と残る仮説を書く。
  5. 「マップをコピー」で作業メモへ移すか、「保存・読み込み」から編集データを保存する。資料として見せる場合は「印刷・PDF」を使う。

編集データはJSON形式で、同じツールへ読み込んで続きから編集できます。ブラウザ内の自動保存もありますが、端末やブラウザを替えて使う場合は編集データを持ち出します。Excel・PowerPoint形式の直接出力ではありません。

無料ツール 担当者の行動と、未確認の点を1枚に整理する

5段階の行動・接点・考え・感情に、困りごとと確認メモを付けてマップを作れます。印刷・PDFで会議資料にもできます。

気持ちの線は記入内容の整理です。顧客満足度を測定した数値ではありません。

よくある失敗:図を埋めて終わらせない

失敗 見直し方
営業の提案手順だけを書く 「資料を送る」から「担当者が資料を読み、社内説明に使う情報を探す」へ主語を変える
営業に会う前の段階を空欄にする 初回商談で候補を知った経路と比較先を聞き、接点の欄を埋める
担当者と決裁者の感情を同じ線でつなぐ 主役を固定し、別の視点は別のマップへ分ける
「社内で決める」を1マスで済ませる 誰に何を説明する必要があったかを書き、関係者全員で読める資料を支援案にする
生成AIの案を調査結果として使う 仮説と記載し、手元の記録や顧客への確認で検証する
顧客に一部を聞いたので列全体を確認済みにする 何を確認し、何がまだ仮説かを確認メモに残す
全段階に施策を増やす 判断材料が足りず止まっている場面を選び、支援案と確認方法を決める

完成後の会議では、各列を説明するだけでなく「どの事実が足りないか」「次に何を確認するか」を決めます。たとえば試用手順を改善したなら、次の商談で、試せた作業・止まった作業・不足した情報を記録します。数件の感想から売上増加を断定せず、まず対象の困りごとが解消されたかを確かめます。

よくある質問

BtoBとBtoCのカスタマージャーニーの違いは何ですか?

最大の違いは、複数の関係者が検討し、社内の合意を得る段階があることです。BtoBでは担当者・現場の利用者・情報システム担当者・決裁者の役割が分かれることが多く、稟議などの承認を経て購入が決まります。マップでは主役を1人に固定し、ほかの関係者はやり取りする相手として書きます。

BtoBのカスタマージャーニーマップは誰を主役にしますか?

改善したい体験を持つ担当者を1人選びます。多くの場合は導入を進める担当者です。決裁者や利用者の行動・感情を詳しく調べる必要がある場合は、別のマップに分けます。

顧客に聞いていない段階でも作れますか?

仮説のマップとして作れます。ただし確認済みの事実と区別し、どの部分を誰に確かめるかを残します。営業担当者の推測や生成AIの回答を、顧客が実際に言ったこととして記載しないでください。

BtoB向けのテンプレートはありますか?

本記事から案内する無料ツールでは、BtoBの架空例が入った状態から書き換えて作れます。作ったマップはテキストのコピー、印刷・PDF、JSON形式の編集データで保存できます。ExcelやPowerPointの編集ファイルを直接出力する機能はありません。