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AIforceとは、Salesforceが2026年9月15日にDreamforceで発表した「生きたインターフェース層」で、Salesforceの中にある業務データ・ワークフロー・業務ロジック・権限を、Salesforceの画面を開かずにClaudeやSlackなど人が実際に働いている場所から使えるようにする仕組みです。公式発表はこれを「a live interface layer that brings the full power of Salesforce to wherever people and agents work」(人とエージェントが働くあらゆる場所へ、Salesforceの全能力を届ける生きたインターフェース層)と定義しています(公式発表)。名前が似ているため既存のAgentforceと混同されやすいのですが、両者は増やすものが違います。この記事では、公式ニュースルームの発表文を一次情報として、AIforceが何の層なのか、Agentforceとの違い、最初の3つの入口と提供状況、料金の扱い、データと権限の設計までを整理します。
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AIforceとは何か — 「Salesforceに来てもらう」から「Salesforceが出向く」へ
発表文が前提として置いているのは、企業の知識の多くは既にSalesforceの中にあるのに、そこへ届く方法がSalesforceの画面を開くことしかなかった、という課題です。原文は「until now most people could only reach it by opening the app and navigating through our UI」(これまで大半の人は、アプリを開いてUIをたどることでしか到達できなかった)とし、それが使える人・一度に扱える情報量・引き出せる価値を制限してきたと述べています。
AIforceはこの方向を逆にします。原文の言い方では「people don’t have to come to Salesforce to get work done. Salesforce comes to them」(仕事をするためにSalesforceへ来る必要はない。Salesforceのほうが出向く)。Claude・Slack・Lightningなど、利用者が既にいる画面の側にSalesforceの中身が現れる、という設計です。
公式発表はAIforceの性質を5点で説明しています。
| 公式が挙げる性質 | 発表文の内容 |
|---|---|
| Intelligent and dynamic(知的で動的) | エージェントがSalesforce内のデータ・ロジック・会話をまとめて推論し、並べ替えるべきレコードではなく示唆(insights)を返す |
| Secure and governed(安全で統制下にある) | すべてのリクエストが既存の権限と業務ルールの上で動き、各エージェントは質問者本人が見られる範囲しか見られない。操作はSalesforceを経由して戻る |
| Composable(組み立て可能) | 説明するだけで画面・エージェント・ビューを作れる。さらに踏み込むチーム向けにMCP・API・プラグイン・スキルを提供 |
| Zero Data Retention | 業務データはその場の問いに答えるために使われ、モデル提供側には保持されない |
| Work with what you have(今あるもので動く) | 新しい権限モデル・移行・個別の連携開発は不要。管理者が一度つなげば、チームは初日から使える |
3つ目の「組み立て可能」は、読み飛ばされやすいわりに実務への影響が大きい部分です。固定のレイアウトとフィールドをたどらせる代わりに、欲しい画面を言葉で説明するとその場で作れる、という主張になっています。SlackやClaude、Coworkerの中で各自が自分用の画面を持てる、というのが発表文の描く姿です。
Agentforceとの違い — 「働き手」と「入口」で層が違う
日本語で検索すると先に出てくるのは2024年以降のAgentforceの記事で、AIforceの説明はまだほとんどありません。混同を避けるために、Salesforceが自社の構造をどう説明しているかをそのまま見ておきます。発表文はAIforceを「Agentic Enterprise architecture」に加わる層と位置づけ、既存の構成要素を次のように並べています。
| 層 | 発表文での役割 |
|---|---|
| Data 360 | 調和・連合されたデータ、メタデータ、記憶をまとめ、あらゆるエージェントが顧客と事業を理解できるようにする土台 |
| Customer 360 | 営業・サービス・マーケティング・コマースなどで仕事をするための業務ロジック・プロセス・権限・操作を与える層 |
| Agentforce | 事業・職務・業界を深く理解した「デジタルの働き手」。すぐ配備できるエージェントと、自作するためのビルダー |
| AIforce | 上記の土台全体を、あらゆるAIインターフェースへ届ける層(今回追加) |
つまり、Agentforceが決めるのは「誰が働くか」、AIforceが決めるのは「どこから使えるか」。Agentforceのエージェントを増やしても入口はSalesforceのままですが、AIforceが入るとそのエージェントと業務ロジックをClaudeやSlackから呼べるようになります。逆に言えば、AIforceだけを入れても働き手が増えるわけではありません。
エージェントそのものの種類や他社製品との比較は、AIエージェントの種類と比較で4タイプに整理しています。Agentforceの職務別エージェント(Casey・Piper・Hunterなど)の一覧もそちらにあります。
最初の3つの入口 — Claudeforce・Slackforce・Agentforce Coworker
AIforceは3つの実装とともに公開されました。原文は「AIforce is launching with Claudeforce, Slackforce, and Agentforce Coworker」とし、続けて「More will be announced soon」(さらに近く発表される)としています。3つは動く場所も提供状況も違うので、名前を並べる前に表で分けておきます。
| 入口 | 動く場所 | 主な中身 | 提供状況(公式表記) |
|---|---|---|---|
| Claudeforce(Salesforce in Claude) | Claudeの中 | Salesforceの知能を組み込み済みのMCPサーバーとして提供。営業向けの37スキル(見込み客開拓からパイプライン整備まで) | available to all customers in beta(全顧客にベータ提供) |
| Slackforce | Slackの中 | Slackforce Surfaces / Slackbot / Slack CRM / Slack Code の4つ | Dreamforce 2026で公開。機能ごとの提供時期は発表文に記載なし |
| Agentforce Coworker | Lightning画面の中 | 取引先・活動・履歴を横断して推論し、示唆の提示と操作を行うAIの同僚。既に作ってあるAgentforceのエージェントを呼び出す | instantly available(すぐ利用可能)。ボタン1つで有効化 |
Claudeforce — Claudeの中にSalesforceが入る
Claudeforceは、SalesforceとAnthropicの提携を広げるものとして説明されています。中身は組み込み済みのMCPサーバーで、通常この種の連携に必要な手作業の設定・認証・スキルの対応付けを省いた状態でClaudeの中にSalesforceの知能を入れる、という形です。営業向けに37のスキルが最初から入っており、見込み客開拓からパイプラインの整備までを担当初日から使える、と書かれています。
今後の予定として、Tableauによる分析や、サービス・マーケティング・コマース・業界向けのスキルの追加が挙げられています。開発者向けには「Salesforce Development plug-in for Claude Code」があり、40を超えるスキルとGitHub上のスキルライブラリ、動的に読み込まれるサブプラグインが提供されるとされています。
Salesforce in ClaudeはDeloitte・GitLab・Legoraなどがパイロットで使用済みで、現在は全顧客にベータ提供中です。ベータである以上、本番業務の前提に置くのは早い段階だと考えてください。
Slackforce — 会話の場にCRMの文脈を持ち込む
Slackforceは4つの要素で構成されています。
- Slackforce Surfaces — Salesforce・Slack・他ツールから関連する生の文脈とデータを引き出し、チーム全員が絞り込み・探索・コメント・操作をリアルタイムでできる対話的な画面を作る
- Slackbot — Slack内の会話の文脈と、Salesforce側の文脈・意味的な知能・統制された操作の両方を横断して推論する個人アシスタント。発表文の例では、静かになっている取引先を検出し、背後のサポート案件やSlackスレッドを読んで理由を把握し、担当を付け替え、フォローのタスクを作り、復帰を促すメールの下書きまでをSlackから行う
- Slack CRM — Slackの会話・ユーザー・更新をSalesforceにつなぐ。Slackから指示するだけで、Salesforce内に新しい取引先を作る、直近の通話メモを記録する、レコードを更新する、といった操作ができる
- Slack Code — AI開発を複数人の共同作業にする。エージェントと一緒に特定のコーディング作業を進める専用の場をSlack内に持ち、出てくるのはメッセージではなく動くコード・試作・ドキュメント
営業・CSの実務で効きそうなのは2番目と3番目です。「CRMを開かないまま記録が残る」形になれば、入力漏れの原因のひとつは減ります。ただし現時点では提供時期の細かい記載がないため、社内で使える時期を約束できる段階ではありません。
Agentforce Coworker — 唯一「今日から」の入口
3つの中で提供状況がはっきりしているのはAgentforce Coworkerです。Lightning画面の中で動く「AIの同僚」で、Salesforceの内側で動くため既存の権限と業務ルールの範囲をそのまま適用し、信頼境界の外には何も残らないと説明されています。既に構築・配備済みのAgentforceのエージェントを呼び出すため、自社のエージェントが増えるほどCoworkerの守備範囲も広がる、という設計です。
利用実績として、公開から35日間で10万ユーザーが有効化したと記載されています。導入事例ではFulton Bankの担当者が、数週間で20を超えるユースケースを本番稼働させ、約3,000ユーザーを支えていると述べています。
いま使えるもの・まだ使えないものを分ける
速報として読むときにいちばん誤解が起きやすいのがここです。発表文の表記をそのまま整理すると、次のようになります。
- すぐ使える: Agentforce Coworker(Salesforce顧客はボタン1つで有効化)
- ベータ: Salesforce in Claude(全顧客が対象だがベータ)
- 提供時期の明示なし: Slackforceの各機能、Salesforce in ClaudeのTableau分析およびサービス・マーケティング・コマース・業界向けスキル(「今後(in the near future)」とのみ記載)
社内で話題に出たときは、「AIforceが使えるようになった」ではなくどの入口の話かを先に確認してください。3つは提供状況が揃っていません。
料金 — 公式発表に金額の記載はない
発表文に価格は書かれていません。末尾の注記は「Pricing and packaging are subject to change. Availability may vary by region and is governed by customer agreements.」(料金とパッケージは変更されることがあり、提供状況は地域により異なり、顧客契約に従う)というもので、金額・課金単位・既存契約に含まれるかどうかのいずれも読み取れません。
したがって現時点で確実に言えるのは次の2点だけです。
- 追加費用の有無は発表からは判断できない。既存のSalesforce契約・Agentforce契約との関係は担当営業への確認事項になります
- 日本での提供条件も発表からは読み取れない。「地域により異なる」とだけ書かれており、日本の提供時期・条件に触れた記述はありません
金額を伴うSaaSの追加検討に進む前に、まずこの2点を確認するのが順番です。試算を始めるのはそのあとで足ります。
データと権限の扱い — 「新しい権限モデルを作らない」
統制面で発表文が強調しているのは3点です。
| 論点 | 公式発表の表記 |
|---|---|
| 権限 | すべてのリクエストは既存の権限と業務ルールの上で動き、各エージェントは質問した本人が見られるものしか見られない |
| データ保持 | Zero Data Retention。業務データはその場の問いに答えるために使われ、モデル提供側に保持されない |
| 導入の前提 | 新しい権限モデル・移行・個別の連携開発は不要。管理者が一度つなげばチームは初日から使える |
入口が増えると統制が緩むのではないか、という懸念に先回りした設計だと読めます。とはいえこれは発表時点の公式表記であって、自社の情報管理規程に照らした確認を省ける材料ではありません。特に、Salesforceの権限設定がそのまま持ち出される仕組みである以上、現在の権限設計の粗さもそのまま外の画面に出ることになります。入口を増やす前に、既存の共有設定・プロファイルを棚卸ししておくほうが安全です。生成AIの利用規程を整備済みの会社でも、外部のAIインターフェースからCRMを読む経路は想定されていないことが多いはずです。
開発者・パートナー向け — Headless ToolkitとAgentExchange
AIforceを支える仕組みとして、発表文は「Headless Toolkit」を挙げています。Salesforceプラットフォームのあらゆる要素を露出する開かれたアーキテクチャで、MCP・API・プラグイン・スキル・開発者向けツールを提供し、Salesforceの構造の上に独自のAI体験を作れるようにするものだと説明されています。
その上に乗るのがAgentExchangeで、Headless Toolkitを使って画面・エージェント・アプリ・連携・ワークフロー・操作を作るパートナーのネットワークと、それらを見つけて購入・配備するマーケットプレイスだとされています。名前が挙がっているのは、エージェント的インターフェースとしてAnthropic・Amazon Web Services・Google、AIビルダーとしてLovable・Vercel、AIエージェントやツールとしてDocusign・Gamma・Jasper・Rippling です。
ここは「LLMを自社で選べる余地がどこまであるか」を見るための材料になります。現時点では、AIforce自体が特定のモデルに縛られるという記述も、自由に差し替えられるという記述も発表文にはありません。
日本の法人が今週できること
発表直後の段階で意味のある動きは限られます。順番を決めておくと空転しません。
- どの入口の話かを特定する。「AIforceを検討したい」という相談が来たら、Claude・Slack・Lightningのどれを指しているかを先に聞きます。提供状況が揃っていないため、ここが決まらないと検討が進みません
- Agentforce Coworkerの有効化可否を確認する。3つの中で唯一すぐ使える入口です。既にAgentforceを契約している場合は、自社環境でボタンが出ているかを管理者に確認するのが最短です
- 権限設計を棚卸しする。入口が増えると、現在の共有設定の粗さがそのまま外に出ます。有効化の前に、部門横断で見えてしまうオブジェクトがないかを点検します
- 費用と日本での提供条件を担当営業に確認する。発表に記載がないため、社内資料に金額を書ける段階ではありません。「未開示」と明記して回します
- 効果を測る対象業務を1つ決める。全社展開ではなく、CRMへの入力漏れが多い1チームなど、前後比較ができる範囲から始めます。営業工程のどこから任せるかの考え方はAgentic GTMの可逆性・検証可能性の2軸が使えます
よくある誤解・つまずき
- 「AIforceという新しいAIエージェントが出た」と理解する — 最も多い誤解です。AIforceはエージェントではなく入口の層で、働き手にあたるのはAgentforceです。社内説明ではこの区別を最初に置いてください
- 「Claudeforce」を単体の製品名として扱う — Claudeforceは、AIforceの3つの入口のうちClaude向けの実装群を指す呼び方で、最初の中身が「Salesforce in Claude」です。契約や見積もりの話をするときは、どちらの粒度で話しているかを揃えないと噛み合いません
- ベータを本番前提に置く — Salesforce in Claudeはベータ提供です。担当初日から37スキルが使えるという記述は魅力的ですが、ベータの範囲で業務フローを組み替えると、仕様変更のたびに作り直すことになります
- 料金を推測で社内資料に書く — 発表に金額はありません。既存契約に含まれる前提で稟議を書くと、後から差し戻されます。「未開示・要確認」と書くのが正確です
- 権限の棚卸しを後回しにする — 「新しい権限モデルは不要」は、裏を返せば今の権限設計がそのまま適用されるということです。粗いまま入口だけ増やすと、見えてはいけない情報が別の画面から見えます
- MCPの接続先を無制限に増やす — 組み込み済みのMCPサーバーが提供されることと、社内で任意のMCP接続を許可することは別の話です。接続先の管理方針を決めてから広げてください
よくある質問
AIforceとAgentforceは何が違いますか?
Agentforceは仕事を実行するAIエージェント本体(digital workforce)で、AIforceはそのSalesforceの中身をSalesforce以外の画面からも使えるようにする「入口の層」です。公式発表はAIforceを「a live interface layer」(生きたインターフェース層)と呼び、Data 360・Customer 360・Agentforceに続いてAgentic Enterpriseアーキテクチャに加わる層だと位置づけています。つまり働き手を増やす話ではなく、既にSalesforceの中にある業務データ・業務ロジック・権限を、ClaudeやSlackなど人が実際に作業している場所へ届ける話です。
AIforceの料金はいくらですか?
2026年9月15日の公式発表に金額の記載はありません。発表末尾に「Pricing and packaging are subject to change. Availability may vary by region and is governed by customer agreements.」(料金とパッケージは変更されることがあり、提供状況は地域により異なり顧客契約に従う)とあるだけで、既存のSalesforce契約に含まれるのか追加費用が必要なのかは、この発表だけでは判断できません。費用を見積もる段階ではなく、担当営業に確認する段階だと考えてください。
今日から使えるのはどれですか?
3つの入口のうち、Lightning画面の中で動くAgentforce Coworkerだけが「instantly available to Salesforce customers」(Salesforce顧客はすぐ利用可能)とされ、ボタン1つで有効化できると明記されています。Claude向けのSalesforce in Claudeは「available to all customers in beta」(全顧客にベータ提供)で、ベータ段階です。Slackforceはこの発表で公開されたもので、機能ごとの提供時期は発表文に細かく書かれていません。
AIforceを使うとSalesforceの画面は不要になりますか?
不要にはなりません。AIforceは操作の入口を増やす仕組みで、データ・業務ロジック・権限の実体はSalesforce側に残ります。公式発表も「every action routes back through Salesforce」(すべての操作はSalesforceを経由して戻る)としており、Salesforceを外して別のシステムに置き換えるものではありません。日常的にダッシュボードを開かない社員が、Slackやチャットの画面から質問・更新・ワークフロー実行をできるようにする、という位置づけです。
権限やデータの扱いはどうなりますか?
公式発表は「every request runs on existing permissions and business rules」(すべてのリクエストは既存の権限と業務ルールの上で動く)とし、各エージェントは質問した本人が見られる範囲しか見られないと説明しています。あわせてZero Data Retention(業務データはその場の回答に使うだけでモデル提供側に保持されない)と明記され、新しい権限モデルの構築・移行・個別の連携開発は不要だとしています。ただしこれは発表時点の公式表記であり、自社の規程に照らした確認は別途必要です。