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有価証券報告書のAI言及調査2026|上位100社でAI言及は1年で2倍、主役はAIエージェントへ

目次

時価総額上位100社の有価証券報告書では、AIへの言及が1年でほぼ2倍(736回→1,464回)に増えました。伸びをけん引したのは「生成AI」ではなく、「AIエージェント」「フィジカルAI」という次の言葉です。

本調査は、Digital Sales編集部による一次調査です。国内時価総額上位100社の直近2期分の有価証券報告書(計200冊)から経営戦略に関する記述を抽出し、キーワード23語の出現回数と言及企業数を集計しました。この記事では、23語×2期の結果と100社別の内訳、調査方法をすべて公開します。

  1. AIへの言及は736回→1,464回とほぼ2倍。言及企業は80社→87社に広がった
  2. 「生成AI」は145回→155回の微増にとどまり、「LLM」はむしろ減少。代わりに「AIエージェント」の言及企業が6社→11社に倍増、「フィジカルAI」が0社→5社で初登場
  3. 「DX」への言及は434回→329回と24%減。経営の語彙が「DX」から「AI」へ世代交代しつつある
AI言及は1年でほぼ2倍、DX言及は24%減(時価総額上位100社・有価証券報告書) 言及回数の変化: 「AI」は倍増、「DX」は減少 AI(総数) 前期 736回 最新 1,464回(+99%) DX 前期 434回 最新 329回(-24%) 対象: 時価総額上位100社の有価証券報告書の直近2期(経営方針・事業等のリスク・サステナビリティの記述) Digital Sales編集部調べ(2026年9月)
AIへの言及は1年でほぼ2倍に増えた一方、DXへの言及は24%減り、経営の語彙が入れ替わりつつある。

AI言及を大きく増やした企業はどこか

対象100社の「経営方針」「事業等のリスク」「サステナビリティ」の記述で、AIへの言及は前期736回から最新期1,464回に増えました。言及企業は80社→87社です。増加幅が大きかった上位10社は次のとおりです。

企業名 AI言及回数(前期→最新) 増加幅
日立製作所 30回 → 92回 +62回
NEC 24回 → 73回 +49回
LINEヤフー 22回 → 70回 +48回
ソフトバンクグループ 71回 → 111回 +40回
NTT 25回 → 62回 +37回
KDDI 6回 → 38回 +32回
キヤノン 7回 → 37回 +30回
野村総合研究所 15回 → 42回 +27回
ソフトバンク 47回 → 72回 +25回
富士通 43回 → 66回 +23回

上位は通信・IT・電機に集中しています。ただし注目すべきは非IT企業の動きで、前期はほとんどAIを語らなかった企業が、一斉に語り始めています

  • 三井住友フィナンシャルグループ: 2回 → 18回
  • 住友商事: 1回 → 19回
  • 東日本旅客鉄道: 1回 → 13回
  • アステラス製薬: 0回 → 11回

言及企業87社という数字は、AIが一部のテック企業の話題ではなく、業種を問わない経営課題になったことを示しています。

伸びたのは「生成AI」ではなく「AIエージェント」「フィジカルAI」

AI言及が倍増した一方で、生成AIという言葉自体は145回→155回の微増にとどまりました。LLM(大規模言語モデル)への言及は、むしろ20回→12回に減っています。つまりAI言及の急増は「生成AIブーム」の延長ではなく、次の言葉によってもたらされています

AI関連4語の言及企業数(前期→最新・時価総額上位100社) 言及企業数の変化: 伸びたのは「AIエージェント」「フィジカルAI」 生成AI 前期 47社 最新 53社(+6社) AIエージェント 前期 6社 最新 11社(ほぼ2倍) フィジカルAI 前期 0社 最新 5社(新出) LLM(大規模言語モデル) 前期 7社 最新 5社(-2社) 対象: 時価総額上位100社の有価証券報告書の直近2期(経営方針・事業等のリスク・サステナビリティの記述) Digital Sales編集部調べ(2026年9月)
「生成AI」の言及企業は微増にとどまる一方、「AIエージェント」は倍増、「フィジカルAI」は5社が初めて言及した。

AIエージェント: 言及企業は6社から11社へ倍増

AIエージェント(エージェントAI・エージェンティックAIを含む)への言及は9回→24回、言及企業は6社→11社に増えました。

企業名 言及回数(前期→最新) 備考
日立製作所 0回 → 5回 新規言及
富士通 3回 → 5回 継続・増加
ソフトバンクグループ 1回 → 3回 継続・増加
武田薬品工業 0回 → 3回 新規言及
トヨタ自動車 0回 → 2回 新規言及
三菱重工業 0回 → 1回 新規言及
SOMPOホールディングス 0回 → 1回 新規言及
ENEOSホールディングス 0回 → 1回 新規言及
古河電気工業 0回 → 1回 新規言及
ソフトバンク 1回 → 1回 継続
リクルートホールディングス 2回 → 1回 継続

表には最新期に言及がある11社のみを載せています。このほかスズキとLINEヤフーが前期のみ言及(各1回)しており、前期の合計は9回です。

新規言及組にトヨタ自動車・武田薬品工業・SOMPOホールディングス・ENEOSホールディングスが入っています。AIエージェントがIT業界の用語から、製造・製薬・保険・エネルギーまで含む経営の言葉に変わったことが分かります。AIエージェントそのものの解説は「AIエージェントの種類と比較」に、営業活動への応用はエージェンティックGTMの用語解説にまとめています。

フィジカルAI: 前期0社から5社が初めて言及

フィジカルAI(ロボットや機械など物理的な装置に組み込むAI)への言及は、前期は100社中0社でした。最新期はソフトバンクグループ(6回)、日立製作所(7回)、三菱重工業(1回)、三菱電機(1回)、富士通(1回)の5社が新たに言及しました。

5社のうち4社が重工・電機系です。ソフトウェアの中で完結していたAIが工場・ロボット・インフラ設備に出ていく局面を、日本のものづくり大手が経営戦略の言葉として書き始めた、という変化です。

「DX」の言及はなぜ24%減ったのか

DX(デジタルトランスフォーメーション)への言及は434回→329回と24%減りました。減少幅が大きいのは三井物産(23回→5回)、野村総合研究所(21回→4回)、りそなホールディングス(12回→2回)などです。

ただし言及企業数は72社→71社とほぼ変わっていません。DXをやめたのではなく、「DX」という掛け声を繰り返す書き方が減り、AI活用という各論に言葉が置き換わっていると読み取れます。デジタル化はもはや差別化要素ではなく前提であり、経営の言葉は「何で変わるか(AI)」に移った、というのが本調査の解釈です。

全23キーワードの増減一覧

調査した23語すべての結果です。言及回数の多い順に並べ、AI・DXに関わる語は太字にしています。

キーワード 言及回数(前期→最新) 増減 言及社数(前期→最新)
サステナビリティ 2,854 → 3,276 +15% 100社 → 100社
人材 2,240 → 2,323 +4% 82社 → 86社
気候変動 2,020 → 2,048 +1% 100社 → 100社
AI(総数) 736 → 1,464 +99% 80社 → 87社
カーボンニュートラル/脱炭素 1,131 → 1,179 +4% 93社 → 93社
人的資本 601 → 818 +36% 96社 → 98社
サイバー(攻撃/セキュリティ) 500 → 639 +28% 90社 → 93社
営業 566 → 607 +7% 94社 → 98社
為替/円安 578 → 604 +4% 94社 → 94社
半導体 387 → 384 -1% 36社 → 36社
DX 434 → 329 -24% 72社 → 71社
地政学 222 → 305 +37% 77社 → 84社
データセンター 144 → 206 +43% 36社 → 41社
関税 157 → 159 +1% 57社 → 62社
生成AI 145 → 155 +7% 47社 → 53社
インフレ/物価上昇 117 → 122 +4% 49社 → 49社
賃上げ/賃金 117 → 116 -1% 48社 → 45社
マーケティング 105 → 108 +3% 44社 → 40社
M&A 48 → 42 -12% 16社 → 14社
人手不足 32 → 37 +16% 27社 → 26社
AIエージェント/エージェントAI 9 → 24 +167% 6社 → 11社
フィジカルAI 0 → 16 新出 0社 → 5社
LLM/大規模言語モデル 20 → 12 -40% 7社 → 5社

AI以外では、「人的資本」「地政学」「データセンター」の伸びが目立ちます(それぞれ+36%・+37%・+43%)。データセンターの伸びはAI投資と関連が深く、AIを直接語らない電力・不動産・素材の企業も、データセンターを通じてAIの影響圏に入りつつあると考えられます。

AIに言及しなかった13社はどこか

最新期の報告書でも、対象記述にAIへの言及が一度もなかった企業は13社です。JTとコナミグループは前期に1回ずつ言及していましたが、最新期はゼロになりました。

時価総額順位 企業名 AI言及(前期→最新)
11 ファーストリテイリング 0 → 0
13 キーエンス 0 → 0
20 JT 1 → 0
25 任天堂 0 → 0
39 オリックス 0 → 0
57 オリエンタルランド 0 → 0
65 三菱地所 0 → 0
66 SMC 0 → 0
74 イオン 0 → 0
78 バンダイナムコホールディングス 0 → 0
84 アシックス 0 → 0
86 コナミグループ 1 → 0
96 日本ペイントホールディングス 0 → 0

ブランド・体験・素材など、競争力の源泉がAIの外にある(と各社が判断している)企業が並びます。ただし後述のとおり、有価証券報告書に書かないことと、社内でAIを使っていないことは別です。この13社の顔ぶれは「AIを語る義務はない」という選択の表れとして読むべきです。

数字を誤読しないための4つの注意

数字だけを見ると誤読しやすい点を先に挙げておきます。

  1. 言及回数は「取り組みの深さ」ではない。有価証券報告書の記述量や章の書き方は会社ごとに違うため、回数の多寡をそのまま優劣として読まないでください。年をまたいだ「変化」を見るのが本調査の使い方です。
  2. 言及ゼロ=AIを使っていない、ではない。有価証券報告書は投資家向けの法定開示書類であり、記載するかどうかは各社の開示判断です。社内でのAI活用と開示文書の言及は別物です。
  3. 業種によって章の厚みが違う。金融はリスクの章が厚く、メーカーはサステナビリティの章が厚い傾向があります。業種をまたいだ回数の比較は参考程度にしてください。
  4. 3社は集計対象の期間が他社とずれています。ファーストリテイリング(8月期)、レーザーテック(6月期)、ニデック(提出延期)は、調査時点で提出済みの直近2期分を使用しています。

調査概要

  • 調査主体: Digital Sales編集部による自社調査
  • 調査対象: 国内上場企業の時価総額上位100社(2026年9月1日終値時点、Yahoo!ファイナンス時価総額ランキングに基づく)
  • 対象文書: 各社が金融庁の開示システムEDINETに提出した直近2期分の有価証券報告書のうち「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」「事業等のリスク」「サステナビリティに関する考え方及び取組」の記述(計200文書)
  • 調査時期: 2026年9月
  • 調査方法: 開示データから対象の章を抽出し、キーワード23語の出現回数と言及企業数を集計。全角半角・大文字小文字の表記ゆれは正規化し、「サイバーセキュリティ」のような複合語を「サイバー」と「セキュリティ」で二重に数えない扱いに統一しています

100社別の全データ(時価総額順)

100社すべてのAI言及回数(前期→最新)と、AIエージェント・フィジカルAIの最新期言及回数です。順位は時価総額順(2026年9月1日終値時点)。「-」は言及なしを表します。

順位 企業名 AI言及(前期→最新) AIエージェント フィジカルAI
1 トヨタ自動車 1 → 4 2 -
2 三菱UFJフィナンシャル・グループ 6 → 16 - -
3 ソフトバンクグループ 71 → 111 3 6
4 キオクシアホールディングス 36 → 47 - -
5 三井住友フィナンシャルグループ 2 → 18 - -
6 リクルートホールディングス 25 → 42 1 -
7 東京エレクトロン 3 → 5 - -
8 日立製作所 30 → 92 5 7
9 アドバンテスト 10 → 20 - -
10 ソニーグループ 17 → 34 - -
11 ファーストリテイリング 0 → 0 - -
12 みずほフィナンシャルグループ 5 → 24 - -
13 キーエンス 0 → 0 - -
14 三菱商事 16 → 12 - -
15 伊藤忠商事 4 → 7 - -
16 NTT 25 → 62 - -
17 東京海上ホールディングス 6 → 15 - -
18 三井物産 16 → 20 - -
19 村田製作所 8 → 6 - -
20 JT 1 → 0 - -
21 三菱重工業 5 → 16 1 1
22 ゆうちょ銀行 1 → 11 - -
23 KDDI 6 → 38 - -
24 信越化学工業 2 → 5 - -
25 任天堂 0 → 0 - -
26 三菱電機 6 → 17 - 1
27 中外製薬 5 → 7 - -
28 ソフトバンク 47 → 72 1 -
29 パナソニックホールディングス 32 → 50 - -
30 フジクラ 3 → 11 - -
31 武田薬品工業 21 → 16 3 -
32 住友商事 1 → 19 - -
33 丸紅 2 → 3 - -
34 HOYA 1 → 1 - -
35 ホンダ 4 → 6 - -
36 MS&ADインシュアランスグループホールディングス 11 → 11 - -
37 豊田通商 0 → 6 - -
38 日本郵政 6 → 14 - -
39 オリックス 0 → 0 - -
40 住友電気工業 6 → 7 - -
41 コマツ 5 → 4 - -
42 富士通 43 → 66 5 1
43 NEC 24 → 73 - -
44 第一生命ホールディングス 4 → 10 - -
45 大塚ホールディングス 2 → 2 - -
46 SOMPOホールディングス 14 → 28 1 -
47 キヤノン 7 → 37 - -
48 ルネサスエレクトロニクス 2 → 7 - -
49 ディスコ 1 → 1 - -
50 ダイキン工業 5 → 6 - -
51 TDK 10 → 10 - -
52 ファナック 2 → 4 - -
53 りそなホールディングス 2 → 4 - -
54 イビデン 3 → 3 - -
55 デンソー 2 → 6 - -
56 ブリヂストン 1 → 2 - -
57 オリエンタルランド 0 → 0 - -
58 第一三共 14 → 21 - -
59 味の素 7 → 6 - -
60 INPEX 1 → 1 - -
61 京セラ 13 → 16 - -
62 野村ホールディングス 0 → 8 - -
63 三井住友トラストグループ 4 → 9 - -
64 セブン&アイ・ホールディングス 3 → 10 - -
65 三菱地所 0 → 0 - -
66 SMC 0 → 0 - -
67 スズキ 14 → 3 - -
68 アステラス製薬 0 → 11 - -
69 富士フイルムホールディングス 15 → 25 - -
70 三井不動産 0 → 3 - -
71 東日本旅客鉄道 1 → 13 - -
72 東海旅客鉄道 3 → 5 - -
73 LINEヤフー 22 → 70 - -
74 イオン 0 → 0 - -
75 テルモ 1 → 1 - -
76 日本製鉄 1 → 1 - -
77 ENEOSホールディングス 8 → 19 1 -
78 バンダイナムコホールディングス 0 → 0 - -
79 JX金属 18 → 21 - -
80 クボタ 0 → 4 - -
81 住友金属鉱山 2 → 2 - -
82 関西電力 2 → 13 - -
83 花王 2 → 4 - -
84 アシックス 0 → 0 - -
85 住友不動産 0 → 1 - -
86 コナミグループ 1 → 0 - -
87 大和ハウス工業 1 → 2 - -
88 レーザーテック 1 → 1 - -
89 ニデック 1 → 8 - -
90 レゾナック・ホールディングス 1 → 4 - -
91 セコム 0 → 2 - -
92 野村総合研究所 15 → 42 - -
93 IHI 0 → 1 - -
94 大和証券グループ本社 1 → 8 - -
95 日本郵船 0 → 2 - -
96 日本ペイントホールディングス 0 → 0 - -
97 古河電気工業 5 → 6 1 -
98 塩野義製薬 4 → 6 - -
99 アサヒグループホールディングス 6 → 4 - -
100 SCREENホールディングス 1 → 3 - -

引用・転載について

本調査の数値・グラフは、出典として「Digital Sales編集部調べ」と明記し、本記事へのリンクを設置いただければ自由にご利用いただけます。メディア・社内資料・提案資料のいずれも事前連絡は不要です。

🧰 関連ツール: 自社のAI活用度を測るならAI導入準備度診断、社内のAI利用ルールを整えるなら生成AI利用ガイドライン作成ツール、AI導入の費用感をつかむなら生成AI API料金計算ツールが使えます。

よくある質問

有価証券報告書でAIに言及している企業はどれくらいありますか?

時価総額上位100社のうち、最新期の有価証券報告書でAIに言及した企業は87社です(前期は80社)。言及回数の合計は736回から1,464回へと1年でほぼ2倍に増えました。対象は「経営方針」「事業等のリスク」「サステナビリティ」の記述で、Digital Sales編集部が2026年9月に全量集計した結果です。

フィジカルAIに言及した企業はどこですか?

ソフトバンクグループ、日立製作所、三菱重工業、三菱電機、富士通の5社です。前期は100社中0社で、2026年提出の有価証券報告書から初めて登場しました。ロボットや機械などの物理的な装置にAIを組み込む潮流を、重工・電機系の大手が経営の言葉として使い始めたことを示しています。

なぜDXの言及が減っているのですか?

DXへの言及は434回から329回へ24%減りましたが、言及企業数は72社から71社とほぼ変わっていません。DXをやめたのではなく、掛け声としての「DX」を繰り返す書き方が減り、AI活用など具体的な各論に言葉が置き換わっていると読み取れます。デジタル化が「言うまでもない前提」になった段階と考えられます。

この調査データは引用・転載できますか?

出典として「Digital Sales編集部調べ」と明記し、本記事へのリンクを設置いただければ、グラフ・数値とも自由に引用できます。メディアでの利用、社内資料・提案資料への転載も同じ条件で可能です。事前連絡は不要です。