営業の提案書作成
情報があふれる現代で、営業が商品を売る難易度はどんどん上がっています。
そんな営業活動において、いまや必須と言える「提案書」ですが多くの人はパワーポイントで作成しているでしょう。
そんな営業からよく聞く悩みが
- キレイな提案書が作れない
- 作るのに時間がかかる
- センスが無いので仕上がりが微妙
このように、パワーポイントでの提案書作成に課題感を持っている営業は多いでしょう。
提案書にセンスは不要
営業職においてパワーポイントの提案書作成にセンスは不要です。
多くのテクニックが、知っているか、知らないかだけの差ですので、今日からでもすぐ改善できます。
営業はデザイナーではないので、提案書はあくまで最終成果を得るための武器の一つです。
今回は、営業のためのパワーポイントをご紹介します。
著者の経歴
念の為に私の経歴をお伝えすると、営業一筋であり、絵心ゼロ、センスゼロの非アート系人材です。
しかし、大手IT企業で週に平均5本程度のパワーポイント提案書を約8年間作成しています。
営業のパワーポイント作成に関するセミナー開催実績もあり、営業におけるパワーポイントに特化したスキルをご紹介します。
営業における提案書の役割
まず、提案書がどんな役割を持っているかを理解しなければ営業の提案書は作れません。
営業の提案書は”皿”
営業の提案書は、料理における皿の役割をイメージすると分かりやすいでしょう。
例えば、美味しい料理をダンボールに乗せて出すと、本当は美味しいのに不味そうに見えます。
提案書も同じで、提案内容自体は素晴らしいのに、提案書が汚いと本来の提案力を発揮できません。
あくまで皿
逆を言うと、どんなにキレイな皿に盛り付けても、料理が不味ければ、不味い事実は覆りません。
どんなキレイに提案書が作れても、提案内容がお粗末ならば、良い提案はできません。
つまり、今回お伝えするのはあくまで”皿”であり、提案内容の足を引っ張らない、もしくは少しだけ良く見えるようにするテクニックとも言えます。
では、早速具体的なテクニックをご紹介します。
①数字を大きく単位を小さく
数字を強調したい時は、全部の文字サイズを統一するのではなく、上の図のように数字だけ大きくし、単位やその他の文字を小さくします。
場合によっては、上記のように色を分けても強く印象づける事ができます。
バーゲンセール等のチラシを見てみると、この手法が使われている事に気づくはずです。
②「塗り」+「枠」はNG
パワーポイントで図形を使うときに、塗りつぶしと枠色を両方つけるのはNGです。
パワーポイントのデフォルトでは、塗と枠がついた状態で図形が作成されますが、そのままにすると野暮ったい図形が出来上がります。
「塗りだけ」か「枠だけ」にする事で簡単にスマートな図形に早変わりします。
デフォルトのまま図形を使わないというのもポイントです。
③1スライド1メッセージ
テッパンですが、1つのスライドには、1メッセージまでにしましょう。
人間は、思っているよりも「多くの情報」を処理できません。
情報を削ぎ落とす事も、伝えるための大切な手段なのです。
情報を絞る事でより本質的な伝えるべき事が見えてきます。
④言いたい事→聞きたい事
営業の提案書は、自分の言いたい事を書く資料ではありません。相手が聞きたい事を伝える資料です。
つまり、こんな機能があります等の自分主体ではなく、それを採用する事で相手にどんなメリットがあるかという視点での言葉選びが必要です。
言っている事は同じでも、相手の言葉に変換する事を意識づけましょう。
⑤色を使いすぎない
塗り絵のように、色を沢山使ってしまうと何が重要なポイントなのか分かりにくくなるだけではなく、単純にダサく野暮ったくなります。
1つの提案書内に、2〜3色程度であれば統一感を保つことができます。
また、原色も避けたほうが良く、少しくすんだ色が望ましいでしょう。
そして色を選ぶ際も、センスは不要です。「配色パターン」で検索すれば様々なサンプルが出てくるので、見栄をはらずそのまま使いましょう。
ユニバーサルデザインとは
上級者になれば、ユニバーサルデザインも意識できると◎です。
ユニバーサルデザインとは、色を識別しにくい色盲の方等に向けた色使いですが、日本人男性の20人に1人は色盲と言われています。
意外と色盲の人は多いので、配慮を欠かさないのも重要です。
⑥揃える
図形や文字は、上下左右だけでなく、その間隔まですべて揃えると見栄えが良くなります。
それだけでなく、図や文字の関係性がすぐに理解できるので、情報伝達のスピードが上がります。
もちろん、手動で合わせると日が暮れるので、パワーポイントの機能を使って揃えます。※ホーム→整列
ショートカットキーを使いこなせれば更に早く美しく作成できます。
⑦結論と根拠の出し方
営業の提案書であれば、結論を出すことが多いでしょう。
そんな時は、上記図のような根拠→結論か結論→根拠の流れを図解すると伝わりやすくなります。
ロジカルシンキングで言う、So WhatとWhy Soの関係ですが、難しい事を覚える必要はありません。
結論だけではなく、結論に至った過程を見せる事で、相手に納得感が生まれます。
⑧森→木を見せる
営業の提案書は、ストーリーや順序が重要です。
いきなり具体的な話をされるより、まず全体感(森)を見せたあとに、具体的な話(木)を見せた方が相手の理解が促進されます。
初めの方は、抽象的な話をしつつ徐々に具体的な話に落としていくと、提案を受ける相手に優しい資料になります。
⑨歪みを許さない
図形やアイコン、写真などの歪みは悪です。絶対に避けるべき要素だと覚えておきましょう。
一つでも歪みがあると、ヘタクソなパワーポイントに見えるだけでなく、お客様のロゴなどを歪ませるのは言語道断です。これだけで信頼を失います。
WindowsでもMacでもShiftを押しながら、図形を引っ張れば縦横比を維持してくれるので、歪みが発生しません。
⑩番号付けと整理
営業商材によっては、どうしても複雑な内容を伝えなければならない場面もあります。
そんな時は、番号をつけて整理してあげると良いでしょう。
結局スライドのどこを見て欲しいのか、何を伝えたいのかを整理して上げると情報量が多くても、伝えきる事が可能です。
⑪グレーを使い現在地を明確に
目次やアジェンダは、テーマが切り替わるページに挿入しましょう。
途中でアジェンダを挿入する際は、現在のテーマ以外のアジェンダをグレーアウトして、ひと目で現在地が分かるようにするとさらに効果的でしょう。
グラフである一つの結果を目立たせたい時等にもグレーアウトは有効です。
様々な場面で使える便利な手法なので、ぜひグレーアウトを使いこなしてみてください。
⑫文字の装飾は避ける
文字の過度な装飾は、見栄えが悪くなるので避けましょう。装飾だけでなく、アンダーラインや文字を斜めにする斜体も必要ありません。
どうしても一部の文字を目立たせたい時は、文字の色を⑤で説明した提案書内で使うと決めた2〜3色の中の色に変えましょう。
⑬写真への文字入れは透過を重ねる
写真に直接文字を載せると、境界の視認性が下がり見にくいスライドになります。
写真に文字を載せたい時は、透過した図形を写真の上に載せ、その図形に文字を入れると表現しやすくなります。上記の画像では図形の色を黒で塗りつぶし、不透明度を50%にしています。
透過した図形の作り方は下記の通り
→図形の塗りつぶし
→その他塗りつぶしの色
→不透明度(1〜100%)
⑭グラフと同じ情報はいらない
⑮伝えたい情報に絞る
⑯折れ線は太くする
⑰アイコンのトンマナを揃える
⑱背景透過されたアイコン(PNG)を使う
営業の「提案書作成力」を高めるには?
ここまで営業のパワーポイント提案書作成における、テクニックをご紹介しました。
一部は、一般的なデザイン書に当たり前のように記載されている事でもあります。
あとは、いかにに営業現場で活かせるかですが、提案書作成力を高める3つのポイントをご紹介します。
- デザインの基礎を学び実践する
- 身近なデザインを観察する
- 再利用を意識する
デザインの基礎を学び実践する
先程紹介した10のポイントは必須で実践して欲しい事ですが、プラスアルファで薄いデザイン関係の本も読んでおいて損はありません。
デザイナーでは無いので、内容を完璧に理解する必要はありませんが、多くのテクニックは簡単に自分のものにできます。
基礎を知ったら、あとは実践あるのみ。意図的に数をこなす事で地力として腹落ちします。
身近なデザインを観察する
提案書に限らず、身の回りには美しいデザインが沢山あります。
バーゲンのチラシから、テレビのテロップまで、多くはデザイナーが仕事を勝ち取ってデザインしたものです。
意識しなければ、見落としがちですが、身近なデザインを観察し、良いところを自分の資料に落とし込むのが近道です。
再利用を意識する
営業は「提案書を作ること」が仕事ではありません。
なので、提案書を早く作る事も重要な要素です。
今作っている資料が、他の提案でも使いまわせるか、フォーマット化できないかを常に考えて、再利用前提で資料を作る事をおすすめします。
自分の中で、よく使うスライドや、図形、フォント等をストックしておくことで、素早く提案書を作れるようになります。
まとめ
営業の提案書は、大きな武器ですが本質は、お客様の課題解決や、未来の創造を伴う販売です。
提案書はあくまで枝葉なので、本質である提案の質を高める事も忘れないようにしましょう。
本質を掴む為に必要な、コンサルティング営業についてはこちらを参照
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